図面は1ミリ単位で描く。でも現場では、「ちょっと」という単位が飛び交う。

ちょっと上げて。もうちょっと右。気持ち下げようか。数字にすれば数ミリの話を、わざわざ曖昧な言葉でやりとりする。はたから見たら適当に見えるかもしれないけど、これがけっこう正確だから面白い。

「5ミリ上げて」と言われたら、5ミリ上げることしかできない。でも「ちょっと上げて」なら、全体を見ながら、いちばん良いところで止められる。数字は手を縛る。曖昧な言葉のほうが、目と体の判断に任せられる。

最後の決め手は、図面じゃなくて目だと思っている。図面通りに納めたのに、なんか変、ということがある。逆に、図面からは少しずれているけど、こっちのほうがしっくりくる、ということもある。建物は数字で建つけど、空間は感覚で仕上がる。

ミリで考えて、ちょっとで決める。その両方を行き来できるのが、いい現場なんだと思う。